美容室の数は日本全国で約25.4万店(令和元年度、厚生労働省集計)、理容室の数も足すと37万店にもなる。これだけの数あるのだから個性的な美容室があって当然であるし、必ず各都道府県には珍スポット的な美容室・理容室が存在する。
ところで趣味に仕事を取り入れられたら、どれだけ素晴らしいことが。自分のやりたい事を仕事にするのではなく、仕事の中に分のやりたいことを組み込む。とてもモチベーションが上がるソリューションだ。
それを実践しているのが、広島市の上安駅近くにある「美容MASAKICHi(マサキチ)」を経営している藤堂正之さんだ。
ダンスも髪型もビシッと決まる藤堂さん
藤堂さんは若いころからヒップホップダンスやブレイクダンスが趣味で、誰に教わるわけでもなく独学でダンスを学び、地元のダンスコンテストでも入賞する実力者だった。ある日、藤堂さんは普段の理容室の仕事にマンネリを感じていた時に客から「得意なものどうし、一緒にやってみれば?」という提案を受け、ダンスをはさみながら髪をカットしてみたところ非常にウケがよかった。それからはお客さんの要望があれば、踊りながら髪カットする「ダンシングカット」をしているとのこと。
ダンスの分はお金を取らない。無料のサービスである。過去には来店した家族5人を7時間ぶっ通しでダンシングカットし続け一日が終わったこともあり、「さすがにあれはしんどかった」笑っていた。すごい。それからは、ダンシングカットは1 日1 名の予約制となっている。
藤堂さんはありとあらゆる音楽に合わせてダンシングカットができると豪語している。洋楽やJ-POP をはじめ、演歌でもアニメソングでもテクノでも、何にでも合わせられるという。得意なのはマイケル・ジャクソンの曲や映画トップガンの主題歌。私は『ビリー・ジーン』や『デンジャー・ゾーン』に合わせてカットしてらい、その他AKB48の『会いたかった』など3 曲も特別に披露していただいた。本当にサービス精神あふれる方だ。このダンスが個性的でたまらない。
マイケル・ジャクソンの曲ではオーソドックスなマイケルダンスを披露される一方、JPOP ではロボットダンスのようなコミカルな振り付けを炸裂させる。藤堂さんはダンシングカットを行う際は、赤いサスペンダーに黒いパンツのステージ衣装を着用し、サングラスを着用する。素面だと恥ずかしいが、サンラスをかけることによってスイッチが入るという。
カットが始まり、終わるころには2 時間近く経っていた。サングラスだと実は髪の毛は見えにくいんだそう。でもハサミはスレスレのところで頭に刺さらなかったらすごい。そもそも私の髪の毛が短くとても切りづらいからか、踊っている藤堂さんが持つハサミが勢いよく頭皮をかすめていくので内心ずっとハラハラしていたが、このスリルもダンシングカットの醍醐味なのだと自分自身を納得させた。
すべては客の笑顔のため
客が2人いればダンシングカットダブルも行えるとのことだが、やはり藤堂さんは体力の衰えを日々感じているとのこと。美容室を営業している間はずっとダンシングカットも続けていきたいと熱いハートを持った方だが、藤堂さんも御年65歳(2017年時点)。「いつまでやれるかの~90歳になっても続けてたいねえ」と笑っていた。時間も体力も使い、大して儲けにならないのにダンシングカットをやめない理由は「踊りながら髪を切ると、お客さん笑顔になるから。」それだけである。頭が下がる。
カット料金は3,000 円(シャンプー含)。本当にこの料金でいいのか申し訳なくなるほどのサービスだ。
藤堂さんは『YouTubeで流してほしい。宣伝してほしい!』としきりに言われていたので、アカウント持ってる人は平日の空いてる時間とかに訪れて撮影して、是非アップしたらいいと思います。カットやダンスの技術だけではなく、終始客を楽しませてくれるという本当にプロのエンターテイナーだと感じた。
「髪は長い友達」手前に駐車されている愛車のバイクも長い友達だ。
2017年7月訪問
「美容室MASAKICHi」について
アクセス :広島高速交通広島新交通1号線(アストラムライン)上安駅から徒歩約8分くらい
住所 :広島県広島市安佐南区上安2丁目46−19
マイケル・ジャクソン THIS IS IT デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]