モーニング娘。の安倍なつみ・安倍麻美姉妹、飯田圭織、メロン記念日の大谷雅恵の出身地、北海道室蘭市。ありがとう室蘭市。そして室蘭市は最盛期のハロプロだけではなく、やきとりも名物だ。どれくらいの名物かというと、人口あたりの焼き鳥屋の数が全国一多いくらいだ。
室蘭のやきとりは、基本的に鶏肉を使わず、豚肉を使う。豚肉を使うのに焼き鳥?と思う人もいれば、そんなの有名な話で常識だろと思う人もいると思う。昭和初期の戦時中には、軍需産業として養豚が進められてきたこともあり、食肉として牛肉や鶏肉よりも手に入りやすく、安価な豚肉が重用されていた。室蘭では養豚が盛んだったこともあり、鶏肉ではなく豚肉を串に刺したものが「やきとり」として広まっていった。
市内のお店を見ていると、「やきとり」とひらがな表記にしているお店が多い。これは「あえて鶏肉を使っていないよ」ということを表しているのだそう。
世界的なスーパー巨大製鉄会社、日本製鉄創業の地でもある室蘭では、大昔から市内に鉄鋼関係の労働者が多く生活していた。「安い・美味い・肉」の3拍子が揃うやきとりは、ハードな仕事をこなす肉体労働者から非常に重宝されたそう。やきとり店は腹を空かせた労働者の胃袋を満たし、英気を養う憩いの場でもあった。
せっかく室蘭に来たのだからやきとりを食べたい!と思い訪れたのが、市内でもっとも古い、室蘭のやきとり発祥の店だといわれている「鳥よし」だった。
鳥よしは屋台での営業からはじまり、昭和12年からこの地で店を構えている老舗。使う肉はもちろん豚の精肉とモツ。創業時からずっと変わっていないそう。豚肉を丹念にと炭火で焼いたやきとりは本当に美味しかった。やきとりは一本あたり140円。串一本の大きさが十分に大きく、お手頃価格だ。
一般的な焼き鳥では長ネギを使用するのが普通がけれど、室蘭のやきとりは玉ねぎを使用する。玉ねぎが手に貼りやすい北海道らしい組み合わせだ。豚肉との相性も良い。そして、調味料としては唐辛子や山椒ではなく、洋からしにつけて食べる。豚肉、玉ねぎ、洋がらし。最高の組み合わせだった。(でも食べ方は自由だから、卓上の七味唐辛子や山椒をかけて食べてももちろん美味しい。)
串を見れば見るほど、味わうほど、丁寧な仕事をしていると私は感じた。肉も美味しいけれど、タレが美味い!
やきとりだけじゃなく、焼おにぎりも美味しかった。
平日で時間も遅く、他のお客さんもいなかったためか、ご主人の小笠原光好さんからは、いろいろなお話をうかがえた。室蘭の製鉄所の操業が今よりも栄えていたころ、三交代勤務の終業時間となる15時を過ぎたら一斉に、市内のやきとり店は労働者で賑わいを見せていた話や、「うちにはタモリさんも来てくれたんだよ。」との話とともにその時の写真も見せていただけた。
店自慢の大きく分厚いL字のカウンター越しに聞く優しいご主人とのお話で、やきとりが一段と美味しく感じた。
まさに昭和以降の室蘭の歴史そのものといってもいいような店。ずっとずっと長く続いてほしい。心の底からそう思ったやきとりの店だった。
ちなみに室蘭のやきとりといえば『一平』だと考える人も多いだろう。一平も本店を訪れて、やきとりを食べた。めちゃくちゃ繁盛していた。現在の室蘭市の中心街は、一平本店があるこの東室蘭駅周辺。電車の終着駅である室蘭駅や、鳥よしのある輪西駅のほうは涙が出るくらい寂れていた。
室蘭市内を夜ドライブしていると、測量山展望台の電波塔がカラフルにライトアップされていたので、間近で見るついでに、製鉄の町の夜景も眺めた。綺麗だった。
夜でも光り輝く、いわゆる工場夜景が大好きな人たちにとっては垂涎ものの巨大製鉄所。私にとっては仕事で関わっていたころの思い出でPTSDが発症しそうで直視できなかったけれど、展望台にいた人はみんな製鉄所を眺めていた。あの業界の人たちハードすぎてこわい。いい意味で。
この電波塔のライトアップは市民の寄付によって1日4,000円の費用をかけて続けられている。1988年ライトアップが開始され、今日まで一日も寄付によって絶えることなく、1万日以上連続でライトアップされ続けている。寄付金はメッセージも添えることができ、その内容は一般財団法人 室蘭ルネッサンスの公式HPで確認できる。
2020年3月訪問
「鳥よし」について
アクセス :JR北海道 室蘭本線 輪西駅から徒歩8分
住所 :北海道室蘭市輪西町2丁目2−8
営業時間 :17:00〜22:00(第二、第四日曜休)
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