霧ヶ峰のミステリアスな廃?寺院『昭和寺』【諏訪市】

昭和寺 珍スポット

 温泉、味噌、諏訪湖。様々な魅力がある長野県諏訪市は山も寺も楽しめる。上諏訪から北東に県道40号を少し走った先にある霧ヶ峰には、ミステリアスな寺院『昭和寺』がひっそりと佇んでいると聞き、実際に行ってみた。

昭和寺とは

 上諏訪から整備された山道を走っていると、宿泊施設やキャンプ場などがあり賑わっているポイントにたどり着く。ビーナスラインへの入口なので、バイカーが特に多い。この近くに昭和寺が建っている。

昭和寺

 昭和寺は、世界平和を祈願する無宗派の寺院で、正確な名前は『国際霊廟中観山 同願院昭和寺』。元々は大阪万博でのラオス館として使われた建物を移築したらしい。そのため、独特の雰囲気を持っており、赤く塗られたユニークな外観が特徴的だ。大阪万博が開催されたのは1970年。もう50年以上前だ。大阪から霧ヶ峰まで移築したこともすごい。当事者はこの寺に対して相当の熱量があったのだろう。

昭和寺

寺の上に、目と鼻が、見ているぞ。

昭和寺の最大の特徴は、建物の最上部に描かれた仏の目だ。間抜けな目のようでありながら、万事を見透かしたような神秘的な表情が印象的だ。チベット仏教のブッダ・アイに似ている印象を受ける。訪れた人々の心に残りそうなこの仏の目は、昭和寺のシンボルとなっている。

昭和寺

金色の観音像

 昭和寺の本堂内部には、高さ3メートルの大きな金色の観音像が安置されている。この観音像から、当時の寺院への信仰の深さが伺えた。(鍵は閉められているので中には入れません。)

昭和寺

現状と法要

 昭和寺は長い間、大規模には手入れされていないようだった。霧ヶ峰はその名のとおり深く濃い霧で覆われがちで多湿な環境のため、本堂はボロボロの状態で傷んでいる。

昭和寺

 全体的に壁が剝がれかけていた。

昭和寺

 また、本堂の隣に建っていた事務所(国際青少年研修会館)も人が訪れていない様子。

昭和寺

 かつてはここで、東南アジアからの留学生たちに様々な研修事業が行われていたそう。

昭和寺

 驚くことに、バキバキの廃寺かと思っていたら、(2020年ごろまでは)年に一回の戦没者の慰霊法要で使われていたようだった。このことからも、昭和寺にはまだ信仰の炎が消えずに残っていたことが伺える。思い返せば、寺の外観はボロボロだったが、本堂の内部は整えられた状態であったし、大きな赤い扉の前の階段は、近い過去に付け替えられたように綺麗な状態だった。訪問当時まではFacebookや公式HPなどで確認できたが、現在は存在していない。もしかしたら廃業したのかもしれない。

 こんなに目立つ独特な寺なのにもかかわらず、もう万博のころのようには注目されず、このまま自然の中で朽ちていくのだろう。そう思うと少し寂しくなった。仕方のないことだが。

 昭和寺の目は、今も世界平和を願い、霧ヶ峰から世界を見渡している。

昭和寺

周辺の情報

 昭和寺は、人気の「ドライブイン霧の駅」の近くに位置しており、車やバスで様々な人が訪れていた。そのためアクセスもしやすいので、観光などで諏訪市を訪れた際には、昭和寺にも立ち寄って、このミステリアスな雰囲気を味わってみてほしい。(この記事を書きながら再確認して、ドライブイン霧の駅が2022年5月31日をもって老朽化により閉鎖していることを知った。

 ドライブイン霧ヶ峰の向かいはスキー場になっており、夏は山々の絶景やグライダーで飛んでいる人を眺めながら散策できるようになっている。天気が良いと気持ちが良い。

昭和寺

 霧ヶ峰スキー場のてっぺんにある霧鐘塔

昭和寺

2021年7月訪問

「国際霊廟中観山 同願院昭和寺」について

アクセス :JR上諏訪駅から車で20分
住所   :長野県諏訪郡諏訪市 霧ケ峰13338−27