石川県能登半島にある輪島市は、海の幸に恵まれ、日本で初めて世界農業遺産に認定された自然豊かな「能登の里山里海」のなかにあり「能登のやさしさや土までも」といわれるくらい人情あふれる町だ。自然と生活が織りなす多様で多彩な景観が今も多く残る輪島市に、正角稔さんのお宅がある。正角さんは家と庭を改造して、巨大なオブジェ置き場にしてしまっている。
近所でも超有名な『新幹線の家』
ぱっと見でもかなり印象的なこの家は、近所から「新幹線の家」と呼ばれて(呼ばせて)いるとのこと。
若いころから全国各地で木工職人として働いたり、林業にかかわる運送業にも携わったりしてきたという正角さんは、もともとものづくりが趣味だったが、仕事を引退した70歳くらいから本格的に創作活動に取り組み御年82歳(2017年訪問時)。自作の原色ハットが似合うオシャレな方だ。
オブジェを作り続けている理由はただの「趣味」という。仕事を辞めてどうせ暇だし、趣味を兼ねて誰もやってない、難しいことをやろうという気持ちから始めたそう。
少年時代から乗り物が好きだった正角さんは、近くの住宅街にある旧宅にいた頃から小さい庭にカラクリで動く戦車やロケット、戦闘機などを作っていた。瞬く間にその噂は市内中に広まり、自然と子供たちが集まって遊んだり、保育園や小学生の見学地になったりしていったという。
オブジェが増え続け、手狭になり新しい場所に引っ越したのは輪島市役所と川を挟んでのすぐ向かい。広い庭を手に入れた正角さんは乗り物のオブジェだけでなく、庭の上空を飛ぶ戦闘機や、雨水を流して動き出す大掛かりなカラクリ装置を作り出した。
今にも飛び立ちそうなロケット
日本仕様(?)のF-15
手作り感あふれる戦艦
かなり大掛かりなカラフルカラクリ水車
雨水やホースからの水を流すと、水琴窟や鹿威しが動き出す。どういう用途で作ったのかを訪ねると「特に意味はない」とのこと。
新幹線は憧れの乗り物
乗り物の中でも特に新幹線が好きで憧れを持っていた正角さんは、2014 年に北陸新幹線の開業の決まったことがとてもとても嬉しく、もともとあった2階建ての自宅を壊し、平屋に建て替えて新幹線風の外観に改装してしまったとのこと。すごい行動力だ!
ご自宅の玄関ももちろん手作り。ポストにも「正」の字が大きく書かれていてわかりやすい。
実際に座り、動かすことができる新幹線の運転席
あの大きな新幹線には、実際に内部に入ることもできる。座るだけじゃなくて、触ってみて動かしてみてこそ、この新幹線の魅力がわかるんだと正角さんはおっしゃられていた。
正角さんがいらっしゃて、都合が合えば運転席に座らせてもらい、この新幹線についていろいろレクチャーしてもらえる。
運転席の部屋には、車掌の姿をしたマネキンがおり、音楽も流れ、大きな音の警笛も鳴らすことができる。知らない人が急に聞いたらびっくりするだろう。
当然、警笛を鳴らして記念撮影もした。
運転席の外観を見ると「たのしいわじま ガンバル市民!! 税金さげてよ~」の文字。市役所のど近くにこんなメッセージを掲げるとはすごい度胸だ。
素晴らしいオブジェたちだが、正角さんは空を見ながら「俺のあと、どうするか決めないとな……」とぼんやり言っていた。
2017年5月訪問
「新幹線の家」について
住所 :石川県輪島市河井町 輪島市役所付近(正角さんが家にいるとは限らないので注意)