エスカレーター愛好家の新たな聖地、『おにクル』の縦の道【茨木市】

珍スポット

「おにクル」ってどこの何?

 「おにクル」は、2023年11月にオープンした茨木市の新たな公共施設だ。市民会館跡地に建設され、図書館、ホール、子育て支援施設、プラネタリウム、市民活動センターなど、多彩な機能を備えた複合施設となっている。 その名の由来は、地元の子どもが「怖い鬼さん(いばらき童子)ですら楽しそうで来たくなっちゃうところ」と名付けたという、なんともチャーミングな逸話がある。建築家・伊東豊雄氏の設計により、「立体的な公園」をコンセプトに、建物と周囲の芝生広場やテラスの樹木等の自然が融合した空間が広がっていた。

 「文化・子育て複合施設」という、よくばり弁当のようなジャンルを名乗っているが、私にとっては少し違う。ここは、エスカレーターの交差芸術であり、巨大な吹き抜けの中を舞うことのできるエスカレーターマニアにとっての楽園なのだ。

 まず建物に入って驚いたのは、「縦の道」と名付けられた巨大な吹き抜け空間。 この吹き抜けは、“がんばって空間に解放感を持たせてみました”みたいな感じではない。
 「吹き抜ける気、満々」。ぶち抜きだ。1階から7階まで、スパーンと空気の柱が貫いてる。

 で、そこに何があるかっていうと、エスカレーター。しかも何重にも折り重なってる。バッテンバッテンに交差している。 もう「エスカレーター四十八手」かってくらい、あらゆる角度で組み合ってて、見てるだけで心拍数が上がる。 これ恋か??

7階建ての吹き抜け空間を縦横無尽に交差するエスカレーター

 下から見上げるエスカレーター。 3階から5階にかけての立体交差。 まさに中盤から後半に差し掛かるところ。 最上階から見下ろすエスカレーター。 どの光景も圧巻だ。

 実際に乗って移動すると、エスカレーターが斜めに交差し、上下にすれ違いながら「私たちを楽しんでよ」と語りかけてくる。その様はもはや鉄からのラブレターだ。

 普通の公共施設なら「どの階に行けばいいのか分からん」とクレームが来そうな造りだが、おにクルは違う。 むしろ「さぁ、登れ。」と言われているようで、おのずと階層を越えていきたくなる気持ちになる。ゲームでいえば天空の塔のような感じだ。

 しかも全部で12基!12!干支か!?ってくらい数が多い。 折り重なる複雑なエスカレーターに、逆に「今日も乗車させていただき、ありがとうございます」と言いたくなるレベル。

エスカレーター以外もすごい。でも私にとっての推しはエスカレーター。

念のため書いておく、「おにクル」は施設の持つ役割・機能もすごい。

  • 1階はエントランス広場や木のぬくもり満点なキッズスペース「まちなかの森 もっくる」。めちゃ笑顔の家族連れでにぎわっている。 全員笑顔。
  • 2階は子育て支援スペース「わっくる」。保護者と子供がリラックスしているフリースペースだった。 優しい空間。
  • 4階には1,200席規模のホール「ゴウダホール」。 連日のように面白そうな大規模イベントが予定されていた。
  • 5〜6階は図書館「おにクルぶっくぱーく」。開放感あるおしゃれな空間で、パーソナルスペースが広くとれるのがうれしい。
  • 7階は市民センターやプラネタリウム。宇宙まで見せてくれるのか。地上で十分感動してるのに。

 さすが税収豊かな茨木市。 余裕あるね。 まさに「文化・子育て複合施設」だ。 各フロアにはテーマカラーが設定されていて、視覚的にも楽しめるデザインとなっていた。

 でもね、私は言いたい。 何がすごいって、この施設、室内を除いてはどこにいてもエスカレーターが見える設計なんですよ。 まるで「どこから見ても推しがいる」アイドルライブ会場。エスカレーターのセンター率100%。 エスカレーター周辺にはソファベンチが配置されているので、訪れた人々は自然と立ち止まり、休憩をしながら見ることができる。 当然この現場には剥がしもいない。

なぜ人は、階段ではなくエスカレーターに乗るのか

 それは、そこにエスカレーターがあるから。(楽だし)

 『おにクル』のエスカレーターは、ただの移動手段ではない。 アートであり、建築の主役でもあるのだ。

2025年1月訪問

「おにクル」について

アクセス :JR茨木駅、阪急茨木市駅からなら徒歩で約10分
住所   :大阪府茨木市駅前三丁目9番45号
営業時間 :9:00~21:00(館内の施設によって異なるので公式サイト要チェック)
公式サイト:https://www.onikuru.jp/

 ちなみに、同じく大阪にある梅田のHEP FIVEのエスカレーターも、立体交差になっていて楽しいよ。