日本一人口が少ない町の伝統家屋『大阪屋』でゆっくり過ごす体験は最高だったってハナシ【早川町】

大阪屋 宿

 みんな古い伝統家屋の宿とか古民家宿とか好きだろう。時間や仕事に追われる日々から離れて、古き良き日本を感じたいだろう。町としては日本一人口が少ない、山梨県早川町にある赤沢宿の『大阪屋』 は講中宿だった伝統家屋そのまま利用した宿。赤沢という陸の孤島のような場所にあり、普段の喧騒から離れてとても落ち着いた宿泊ができる。部屋からは大自然が見渡せた。 宿泊した夜は雨音とサルと鹿の鳴き声以外は聞こえなかった。そんな最高宿についてほんの少しだけど紹介したい。

山に囲まれた秘境、赤沢宿

大阪屋
大阪屋

 赤沢宿とは日蓮宗の総本山・身延山や、同じく日蓮宗の霊山である七面山を参拝する人たちのための宿場町として栄えた、いわゆる旅籠の町。今でも昔の集落は重要伝統的建造物群保存地区として町並みが残されている。早川町を訪れるための道は一本のみ。土砂崩れなどでこれが断たれると文字通り孤立してしまう秘境的な町の、さらに奥にあるのが赤沢宿だ。そんな日本のチベットのような場所にある伝統家屋に宿泊ができる大阪屋は、公式HPを見ても「観光客にこの町の雰囲気を味わってもらうぞ」という気合が伝わってきて、予約をした時点からずっとずっと期待をしていた。訪問前に公式HPは熟読しておいた方が現地でより楽しめるよ。ちなみに早川町は日本一望月姓の割合が多いらしい。

赤沢宿

何もないのに、多くを感じられる宿『大阪屋』

 対向車が来ると一発でアウチなくらいに細い赤沢宿の道を車で登っていくと、宿に到着する。運転中、大丈夫だと分かっていても少しドキドキした。大きな二階建ての屋敷に向かって歩き、玄関に行くと案内され、綺麗な客間で宿の管理をされている方から宿の歴史や、宿泊時の注意事項を聞く。大阪屋は江戸時代、天保のころに建てられ、明治時代に改装され二階部分が増築された、築180年以上経つお屋敷だそう。丁寧に説明してくださるので、とてもありがたかった。

大阪屋
大阪屋

 時期や部屋にもよるけど、私は宿泊代が一泊6000円だった。私が宿泊した時期はタイミングが良く、事前に早川町観光協会に寄ったらクーポンをもらってお得になった。すごい。ありがてえ。入室時にサービスでお菓子と、インスタントコーヒーやお茶など5つまでいただける。

大阪屋
大阪屋

 いい雰囲気が出ている階段を上り廊下を渡って部屋に行く。

大阪屋

 何もない、でも十分な広さの畳の部屋には布団が敷かれていて、障子を開けると風光明媚な赤沢宿の町並みの景色を眺めることができた。今日、ここで寝るんだと思うとワクワクした。

大阪屋

 縁側でずっと景色を眺めていたかった。お隣の部屋の宿泊カップルも同じ気持ちだったみたいで、チラチラ目が合って気まずかったけど。

大阪屋

 大阪屋は至れり尽くせり。

 宿泊時にお菓子と飲み物が5種類がもらえ、冷蔵庫に入っている地場の超美味しい野菜とアイスは無料。なんでそんなにくれるの。共用のキッチンで自由に料理をしてよい。食器も使える。なのでみんな食材を持ち込んで泊まるらしい。徒歩ですぐ行ける距離で晩御飯を食べられる店はほぼ無いので、手ぶらで訪問してもギリなんとかなるのがうれしいね。

大阪屋
大阪屋

 共用キッチンは清潔で広い。

大阪屋
大阪屋
大阪屋

 日が暮れて夜になると、またいい雰囲気になってくる。照明が当たる部分以外は暗くなったお屋敷の中で、山の中の自然の音以外は聞こえない。世界には自分たちだけしかいないんじゃないかという感覚になる。

大阪屋
大阪屋
大阪屋
大阪屋

 部屋や布団に入るとき、ただ一つの注意点がある。大阪屋は山の中にある開放感にあふれた古民家の宿なので、戸や障子を閉めていても、夜にはどうしても色々な虫が部屋に入ってくることがある。障子を開けっぱなしにしていると大事件だ。羽虫とかデカいクモとか蛾とかザトウムシとか。それが壁や白い布団の上にいると目立って見えてしまう。それに耐えられない人は、宿泊には向いてないかもしれない。

大阪屋

 お風呂には他の客と何となく順番を譲り合って入る。古いけど、とても清潔だった。トイレもきれいでウォシュレット付き。

大阪屋
大阪屋
大阪屋

 でも私はせっかくなら早川町にしかない地元の温泉を楽しみたいと思って、少し車を走らせて最近何かと話題の雨畑ダムのほとりにある『ヴィラ雨畑 すず里の湯』で温泉に入った。ヴィラ雨畑は宿泊、美味しい食事もできる早川町の廃校を利用した温泉施設だ。

ヴィラ雨畑
ヴィラ雨畑

 ロビーの奥には囲炉裏があり木の温もりが感じられる。風呂場に行くと、地下62mから湧くお湯からはほのかに硫黄の香りがした。風呂には誰もいなかったので写真撮っちゃった。とても気持ちのいいお風呂だった。550円で入浴できるなんてありがたいね。

ヴィラ雨畑

 早川町では「ポポ」という珍しい果物が食べられる。収穫できるのは秋の短い時期で、すぐ熟して数日も日持ちしないので、市場に殆ど出ない幻の果物と呼ばれている。 町の直売所や観光施設だとポポをアイスクリームにしていて、ヴィラ雨畑でも売られていた。 濃厚なバナナとマンゴーを合わせたような甘い味で美味しかった。天然温泉を楽しんだ後に食べる、甘味抜群のアイスは格別だった。雨畑茶も美味しい。みんなもぜひ食べてほしい。

ポポ
ポポ
ポポ
ポポ

 ヴィラ雨畑から歩いてすぐ行けるくらい近くに、吊り橋があった。最近のスマホは性能がいいから明るく見えるけど、実際には真っ暗だしめちゃくちゃ高いしで、かなりの恐怖を感じた。マジで。昼間に行くととてもいい景色らしい。

雨畑ダム

 大阪屋に戻り、晩御飯はせっかくなのでキッチンを使わせてもらい、冷蔵庫に入っていた野菜と宿泊サービスのお菓子、山梨での旅の道中で手に入れた激安で激ウマの桃とシャインマスカット、山梨のワインを楽しんだ。山梨尽くし。旅の中で買いこんだ地元の名物を、その土地の宿で食べる。旅の醍醐味だね。冷蔵庫にあった野菜、めちゃめちゃめちゃめちゃ美味しかった。ありがとう早川町。

大阪屋

 布団の中から大きな画角で見える朝の赤沢宿は、霧に包まれていて神秘的だった。雨でも気持ちのいい朝だった。

大阪屋

 タタタタタタッっと雫が木を打つ雨音を聞きながら、朝御飯にまた冷蔵庫の野菜と、甲府で買った竹川菓子店のかすてら紅梅、韮崎市のコーナーポケットで買ったクワガタパンを食べた。見た目はクワガタだけど、味はしっかりとチョコ。

大阪屋
大阪屋

 最高の宿に別れを告げて駐車場に戻る前に、宿のすぐ近くにある赤沢宿の資料館(というか蔵)を見学した。赤沢宿に人が住み着き、聖地身延山と霊場七面山を結ぶ参道の宿場町として栄え、昭和になり交通の便が発達したが故に宿泊者が減っていくまでの人々の暮らしや歴史、当時の道具を見ることができる。小さい町だからか詳細に記録がされていて、非常に興味深かった。綺麗に管理がされているし、大阪屋に宿泊したなら訪れるべき施設だ。

大阪屋
大阪屋
大阪屋

伝統的建造物群保存地区、赤沢宿を歩く

 宿で清々しいの朝を迎えて車で出発する前にすることがある。それは赤沢宿を散策することだ。

 「伝統的建造物群保存地区」に選定され、宿場町として当時の町並みの面影を残した講中宿や蔵をはじめとする、伝統的建造物、湧水池、石畳の坂道や石垣を見てまわる。

 講中とは、同じ宗教を信じる人たちが、連れもって神様や仏様にお参りするグループのこと。伝統的建造物群保存地区に選ばれた講中宿は、全国でも赤沢だけなので、宿場町として珍しいそう。私は古い町並みとか詳しくないので、歩いてても「へ~古い!すごい!石畳!」くらいしか感じなかったけど、このように古くて美しいままで町並みや建造物が保存されていることは、地域に住まう様々な人たちが、力を合わせて努力を続けてきた賜物であるということはわかった。古い町並みの景色が好きな人には、本当にたまらない集落らしい。

赤沢宿
赤沢宿
赤沢宿
赤沢宿
赤沢宿

 赤沢宿の講中宿の建物には、一階部分に張られている木の札が今も張られているものがある。これは「講中札」。この札に身延山と七面山の参詣のために当時宿泊したグループである講中の名前が書かれている。現代でいうところのホテルや旅館の玄関口に、宿泊者の名前の札を立てて歓迎しているのと同じ感じかな。

赤沢宿
赤沢宿

 雨の赤沢宿ですら「最高~!沁みる!」と思えるようなな景色を楽しめたので、次は絶対に晴れている日に行きたいなとおもった。伝統家屋、古い町並み、自然、美味しい野菜を、落ち着いた環境で味わいたい人は、ぜひ赤沢宿を訪れてほしい。

2020年7月訪問

「大阪屋」について

アクセス :甲府南ICから車で1時間くらい。赤沢宿に入ると道が少し怖いくらい狭いので運転には注意。
住所   :山梨県南巨摩郡早川町赤沢186

駐車場  :あり
公式HP  :https://akasawasyuku.com/(大阪屋)

     :https://villa-amehata.info/(ヴィラ雨畑)
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