日本の見た目にも美しく美味しい鰻料理といえば、きんし丼だ。京都市の新京極近くにある『かねよ』と滋賀県大津市の『かねよ』が有名で、どちらのお店も「日本一」の鰻を謳っている。そしてどちらも名物料理は『きんし丼』。昔、両方の「かねよ」で楽しめる絶品きんし丼を食べたので紹介する。
京都市新京極「かねよ」のきんし丼
京都市の新京極通のそばにある『京極かねよ』は、老舗で知られる鰻料理の名店だ。店の入口にも大きく「日本一の鰻」と書かれた暖簾がかかっている。店内では定期的に寄席も開かれている趣深い店だ。
そして京極かねよで皆が注文するのが、お椀いっぱいに絨毯のように敷かれただし巻き玉子の下に鰻が隠れている『きんし丼』。だし巻き玉子を崩しながら食べる鰻の味は、箸が止まらない美味しさだ。きんし丼には並、上、特があり、それぞれ玉子の下に隠れている鰻の大きさが違う。
創業した大正時代のころは、卵も鰻も貴重だったため、一緒に食べさせたいという発想からきんし丼が生まれた。こだわりは、秘伝のタレ。砂糖を使っていないため甘くはないものの、鰻の脂の甘味と相性抜群だ。
滋賀県大津市「かねよ」のきんし丼
一方、滋賀県大津市の大谷駅近くにも、日本一の鰻を謳うかねよがある。そこは『逢坂山 かねよ』だ
大津のかねよは懐石や鍋料理が食べられる個室等が揃えられている本店に、気軽に入ることのできるレストランが併設されている。私はレストランの方にお邪魔した。敷地内の日本庭園が立派な、由緒ありそうな店の佇まいだった。
こちらのお店の名物も、同じく卵の下に鰻が隠れたきんし丼だ。卵3個分を使った分厚い京風だし巻き玉子をそのまま鰻丼に乗せたもので、玉子焼き単体でもこんなに分厚いものにはお目にかかれない。最近はSNS映えする似たような店が増えたが。
ここまで玉子焼きが大きくなった理由はお店の中に置かれていた冊子に描かれていた。大正時代には薄く焼かれた玉子焼きを、何枚も重ねて細く切った錦糸玉子が鰻の上に乗せられていたらしい。しかしそうした錦糸玉子は手間がかかる。提供までに時間がかかることから、せっかちな逆にせっつかれて早く提供するために太幅の玉子焼きで提供したところ好評だったそう。それから玉子の大きさが少しずつ大きくなり、今のきんし丼の玉子焼きの大きさになったと描かれていた。
口に運んでみると、分厚くふわふわのだし巻き玉子と香ばしく弾力のある鰻が食欲をそそる。また、山椒も上品な香りがするもので、味わい深い一品となっていた。
京都と滋賀の「かねよ」、どちらも素晴らしい味
京都のかねよと滋賀のかねよは、同じ店名で同じ名物料理を提供している。何か因縁があるかと思われるかもしれないが、実は両店はどちらも「株式会社かねよ」でありながら別会社であり、現在はお互いに特に関係はない。しかしどちらが日本一のきんし丼なのか揉めているようだが、ネット上の情報だけでしか確認できないので、私にはよくわからない。
それぞれの「かねよ」で、独自の秘伝のタレや調理法で、美味しいきんし丼を提供しており、どちらのお店も地元の人々に愛されるだけでなく、観光客にも人気がある。京都市は大津市はどちらも近いので、ぜひ両方の「かねよ」で、それぞれの味わい深いきんし丼を堪能してみてほしい。どちらのきんし丼も絶品で、日本一の味を楽しめること間違いなしだ。
2015年7月訪問初訪問
「京極かねよ店」について
アクセス :地下鉄東西線 京都市役所駅から徒歩5分、京阪本線 三条京阪駅から徒歩5分
住所 :京都府京都市中京区松ケ枝町456
営業時間 : 11:30~16:00/17:00~20:30 (水曜休)
公式HP :https://kyogokukaneyo.co.jp/
「逢坂山 かねよ 本店」について
アクセス :京阪京津線 大谷駅から徒歩1分
住所 :滋賀県大津市大谷町23−15
営業時間 : 11:00~20:00 (本店木曜休・レストラン火曜休)
公式HP :http://www.kaneyo.in/index.html