ちょっと変わったサウナに行きたいなあ
「サウナに行こう」
そう言われたら、あなたは何を想像するだろうか。
薄暗いサウナ室、熱したストーン、ジュワッと立ち上るロウリュ、そして水風呂。最近では「ととのう」という言葉もすっかり市民権を得て、サウナはもはや一大レジャー産業である。
……ところが。長崎県諫早市には、そんなサウナ界の常識を真正面からぶん殴ってくる施設がある。
その名も「御湯神指しベストパワーランド」。名前からして強い。
「ベストパワーランド」。ベストなパワーのランドだ。もう施設名だけで、入館した瞬間に何らかの向上効果を授かりそうである。
そして、この施設の最大の特徴が、日本に一つしかない本格的なドーム式石室サウナ「來磊(らいらい)」だ。公式サイトでは「いのちのサウナ」と紹介されている。一体、何が待っているのか。これはもう、行くしかないと思った。
「御湯神指し」と書いて“おんゆかみさし”
施設名を見て最初に困るのが読み方だ。「おゆ……かみ……さし?」
正しい読み方は「御湯神指し(おんゆかみさし)」。初見では、温浴施設というより、古代の神殿か秘境の修行場を連想する。
Googleマップの口コミ評価は4点台。サウナ好きの間ではかなり知られた存在のようだ。

険しく狭い道路を車で草をかき分けながら到着した巨大な建物。その入口をくぐった時点では「まあ、お風呂屋さんだよね」と思う。しかし、施設の奥へ入っていくにつれて、その認識は少しずつ崩壊していく。

「麻袋を被ってください」と言われる人生、なかなかない
施設の目玉である麦飯石の石窯サウナ「來磊(らいらい)」。

石窯のサウナというだけでもなかなか個性的だが、最大の特徴は、一般的なドライサウナのように電気ヒーターで温めるのではなく、ドーム状の石室の中で薪を燃やし、その熱を利用すること。直火の炎が目の前にあるのだ。

しかも、この石窯の中で麻袋を頭からすっぽり被って横になるという、初見だと「え、これサウナの入り方ッスよね?」と二度聞きしたくなるスタイル。

私も石窯の前に座っているお店の方に麻袋を被せてもらい、手を引かれて石窯に入り、指定された位置で寝転んだ。熱っちい! 暗いし!

石窯の中の温度は150℃を超える状態で、炎に近づけば近づくほど熱い。壁側も麦飯石に反射した熱が降ってきて熱い。しかし、適切な距離さえ見つけることができれば、火の粉が当たる近さでも熱さは意外と耐えられる。寝転がる向きは、個人的には仰向けがおすすめだが、顔が熱くてたまらないという人は無理せずにうつ伏せになったり背を向けたほうが良いと思う。
※自分で麻袋を被り、自分で石窯に入ることもできる。
10分経ったら大浴場で体を清める。暫く休憩してまた石窯へ。麻袋の隙間から炎を眺める。心は落ち着くが煙が目にしみるぜ。この光景はもはやサウナというより、昔話やフィクションに登場する謎の儀式だった。
地下水を使った水風呂はかなりぬるめ。20℃くらい? 体に優しく、かなり気持ち良い。ずっと入ってられる。脱衣所には大きな休憩スペースもある。
自分に向き合いながら、上限である3セットを終えたときには、身も心も清められていた。麻袋を被るので、火の近くでも肌は乾燥せずに汗をかけた。煙が苦手な人は心の準備をしておいたほうがいいと思う。乾季はされているようだが、石窯の上部は白い煙があるので、できるだけ身をかがめて石窯の中を移動しよう。
漢方燻蒸で体をさらに清める
ベストパワーランドの個性は、石窯サウナだけでは終わらない。施設には漢方燻蒸を楽しめるコースも用意されている。

通常は2時間程度のサウナコースだが、私はこのサウナ含め3時間の漢方燻蒸コースを味わった。サウナで開いた肌をヨモギを中心とした10種類の漢方で、お股の下から燻す。ケツアナはアチアチ。サウナでも燻され、漢方でも燻され、自分が燻製になった気分だ。

体の隅々まで時間をかけて燻蒸されたため、体全体が草の匂いになった。効果のほどは、、、私にはよくわからないのだが、なんだか体には何かが聞いているような、体から悪いものが出ていったような雰囲気を感じた的な気分となった。
長崎市内の宿へ戻ったあとに市内の居酒屋に行ったら知らない男性から「お兄さん、大麻ばやっとるでしょ?」と言われてしまったので、燻蒸されたあとに人の多い場所へ行く際には香りに気を付けたほうがいいのかもしれない。
己の心と体に向き合うというサウナの本質を感じた
一般的な高温サウナとはかなり趣の違う入り方を楽しむ御湯神指しベストパワーランド。この地で温泉を掘り当てた先代の中島勝義さんが、韓国式の汗蒸幕を参考にして石窯を作り、2000年にこの施設をオープンしたそう。
熱い石窯。直の炎。煙。麻袋。ぬるい水風呂と漢方燻蒸。こうして並べてみると、どう考えても普通のサウナではない。むしろ「サウナ」という言葉だけでは説明しきれない。公式サイトが「神秘の世界」「いのちのサウナ」と表現するのも、なんとなく分かる気がする。
ただし、ここは普通のスーパー銭湯とは違う体験型の施設。煙や熱が苦手な人、体調に不安がある人は無理をせず、スタッフの説明をよく聞いて、自分の体調に合わせて利用したほうがいい。「せっかく長崎まで来たんだから、最高にととのうため限界までやるぞ!」という体育会系精神は、サウナでは必ずしも褒められないのだから。
2024年5月訪問
「御湯神指しベストパワーランド」について
アクセス :JR長崎駅から車で40分
無料送迎バス 賑町バス停から10時10分発(水・日のみ運行)
住所 :長崎県諫早市飯盛町川下234
定休日 :木曜日
料金 :サウナコース 2,800円(税込)
漢方燻製コース 3700円(税込) ※2026年8月時点
公式サイト:https://onyukamisashi.jp/

